歯周病治療について
歯周病は虫歯とともに歯科の2大疾患で国民の大多数が持っている病気です。歯が抜ける最も大きな原因であり、糖尿病、心臓血管疾患、誤嚥性肺炎等々の原因となることがあります、現在では認知症(アルツハイマー型)のリスクを高める原因にもなります。無症状で進行し、歯がグラグラしたり、気が付けば抜けていたということもあります。
「年をとれば歯は自然に抜ける」と多くの方が思い込んでいます。しかし、80歳を過ぎても20本以上の歯が残って何でも食べられて元気な方がたくさんおられます。一方で若くして歯を失っている方も多く見られます。歯周病は遺伝的要因はゼロではありませんが基本的には「生活習慣病」なので予防対策が最も重要です。
下記の項目のうち一つでも該当するものがあった方はすぐに来院をお勧めします
- 歯を磨いたあと、歯茎から膿や出血がある。
- 歯茎が赤く腫れたり痛いときがある。
- 歯茎がかゆく感じたり、お口を開けると歯茎に違和感や痛みを感じる。
- リンゴなどの硬いものを嚙んだ時歯茎から出血したことがある。
- 口が臭いと感じたことや、親しい人から「息が臭い」などと言われたことがある。
- 歯がグラグラと動く感じがする、歯茎が感じがする。
- 朝起きた時、口が粘りついて違和感がある。
- 歯と歯の間に頻繁に食べ物が挟まる。
- 鏡で見ると以前よりも歯が長いように感じる。歯茎が目立つ気がする。
歯周病の症状
歯周病は2つに大別されます。歯肉が炎症を起こして単なる「歯肉炎」と歯を支える骨にまで破壊される「歯周炎」です。歯肉炎は原因がなくなれば治ります。骨にまで影響を与えません。
しかし、歯周炎は骨にまで影響を与えます。つまり影響を受けた骨は元に戻りません。ここで失望しないでください。適切な治療をおこなうことで歯・骨・歯肉の状態を改善し歯周組織のバランスを調整することができます。ここが口腔ケアの再スタートであり歯周病治療のゴールです。これを「口腔の生涯ケア」と考えています。
歯周病の
症状段階別の特徴
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歯肉炎
(歯周ポケットの深さ1〜2mm)歯茎のみに炎症を引き起こしている状態です。
痛みといった自覚症状はほとんどありませんが、歯磨きの時や硬いものを食べた時に出血しやすくなる場合があります。 -
軽度歯周炎
(歯周ポケットの深さ3〜4mm)歯を支えている骨(歯槽骨)が溶け出した状態です。
歯磨きの時に出血したり、歯がうずく、歯茎が腫れぼったく感じるなどの症状があらわれます。しかし一般的な初期段階では、まだ無症状なことが多く注意が必要です。 -
中等度歯周炎
(歯周ポケットの深さ5~7mm)歯を支えている歯槽骨が1/3~2/3ほど溶けた状態です。
水がしみるようになったり、歯磨きをすると歯茎から血が出たり、歯茎が腫れたり治ったりの症状を繰り返します。また、歯がぐらぐらと動揺しはじめ、膿が出たり口臭が強くなる場合もあります。 -
重度歯周炎
(歯周ポケットの深さ7mm以上)歯を支えている歯槽骨が2/3以上溶けた状態です。
歯の周りを指で押すと白い膿がにじみ出て、口臭が強くなる場合もあります。歯磨きの際には頻繁に出血するようになり、歯が動揺して硬いものが噛みにくくなることがあります。放置してしまうと、歯が自然と抜け落ちるケースもあります。
歯周病が進行してしまったら
重度の歯周病は歯周深部にプラークや歯石が付着しとても硬くなっていますので歯ブラシでの除去は困難です。そのため歯石が付着する部位まで歯肉を切除して歯周ポケットを浅くする手術が必要です。一般的な考え方では外科手術によって病気の原因を取り除けば病気は治ります。ところが歯周病は治りません。何故なら条件がそろえばすぐに再発するからです。
歯科衛生士の役割
歯周病にとって何が大事か?考えてみてください。そうです、とにかく歯を一生懸命に磨くことです。ただ磨き方が肝心です。歯磨きのスペシャリストが歯科衛生士です。端的に言うと歯周病をまねいた原因は正しい歯磨きや歯石の除去を含めた定期健診の怠慢に他なりません。私たち歯科医や歯科衛生士はあなたの健康管理のパートナーでありアドバイザーです。
あなたの健康はあなたが守る、あなたが主役です。あなたと歯科医と歯科衛生士との連携でより良い健康管理を目指しましょう。当院では担当の歯科衛生士が一人一人に合った歯ブラシ指導・プラークコントロール、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning/専門家による機械を使った歯面清掃)を早い時期から治療と並行して実施しています。毎日の努力が高齢になった時に必ず活きてきます。継続こそが健康を勝ち取ります。
歯周病治療の流れ
当院では基本的には下記のようなスケジュールで歯周病治療の治療にあたっております。
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レントゲン写真からの骨の吸収量、
吸収の形、骨の緻密度の診断 -
歯周ポケットの深さの測定時の
出血の有無 -
歯肉の色、歯周ポケットからの
排膿の有無 -
歯の動揺の程度、咬合圧、咬合痛の有無
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歯磨きが励行されているか否か
(生活習慣の確認) -
歯ブラシが正しく使われているか否か(歯垢の付着部位と量の確認)
歯周病は初診日の上記チェックにより正確な診断ができた後に治療方針を決定します。
歯周病と全身疾患
歯周病特有の口臭、妊産婦などはホルモンバランスの影響で歯周病を発症しやすくなります。また糖尿病、心臓血管疾患、誤嚥性肺炎、認知症の発症リスクを上げます。